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私は電話を切るとへなへなとソファの背もたれに倒れ込んだ。
ずっと座っていたのにその状態すら保てない。
まるで体中に張りつめられていた糸が切れたマリオネットのように。
私はソファの背もたれに顔を埋めると携帯電話の着信音が聞こえてきた。
…コウだ。
さっきの電話が気になってかけ直してきているんだ。
でも私は携帯電話を取ろうとしなかった。
ただぼんやりと目の前にある携帯電話を見ていた。
コウ。ごめん。
もう電話に出れない。
これ以上コウの声を聞いたら私…自分がわかんなくなる。
でも私って本当に勝手だよね。
コウに言いたい事だけ言って。
聞きたかった言葉を聞けてもう十分って。
私って本当に嫌な奴だから。
もうわかったでしょ?
いつまでもこんな私にこだわる必要なないんだよ。
コウの好きにしていいんだからね。
でもこんな私に一番好きだよって言ってくれてありがとう。
これ以上嬉しい事はないよ。
私は着信音が聞こえなくなると携帯電話を手にした。
そしてコウのアドレスを探すと着信拒否の設定をした。
これでもうコウから電話が来る事はない。
…コウ。
そう思うと同時にまた涙が溢れてきて喉に熱いものが込み上げてきた。
「う…うう…」
静かなリビングに私の泣き声が響き渡っていた。
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