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「…そんな事があったんだ」
先輩はそう言うと持っていた湯呑を置いた。
いつも平常心でいる先輩もこの時は目に涙が浮かんでいて、それを私に見せたくないのか必死に隠そうとしている。
きっとダーリンの気持ちが嬉しかったのだろう。
そりゃそうだよね。
先輩だって好きで家を出たわけでもない。
ダーリンが好きだから諦めていたんだもん。
結婚しているのに、好きなのに諦めなきゃいけない。
これってすごく辛かったと思う。
だから会えて本当に良かった。
先輩が元に戻ってくれて本当に嬉しい。
今こうして嬉しそうにしている先輩を見ていると私までも涙が出そうになる。
「えへへ。がんばっちゃいました」
私は泣かないように、にっこりと微笑んだ。
だってここで私が泣くわけにはいかないでしょう。
すると先輩は慌てて涙を拭うと私を真っ直ぐに見た。
「華ちゃん」
「はい?」
「ありがとう。私達がこうして元に戻れたのは華ちゃんのおかげだよ」
私は先輩の表情を見て驚いた。
あ…先輩…綺麗。
目の前にいる先輩はいつもと変わらないのに。
いや、逆に涙でお化粧が取れかかっているのに。
凄く綺麗に見えた。
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