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コウは立ち上がると私のもとへ向かってきた。
そして背後に立つと後ろからぎゅっと抱きしめる。
普通であれば恋人同士の甘い一時に見えるが、今の私にはそう思えない。
…じゃあ教えてやるよ。じっくりと。
たぶん、コウ、怒っていると思う。
…そうだよね。他所で「愛されてない」なんて言われていい気分じゃないもん。
怒られる…よね?
コウの言葉が、意地悪な表情が私を恐怖でゾクゾクさせる。
「…いや、十分に愛されています。だから大丈夫です」
私は背筋をピンと伸ばすと、ありえない位に丁寧な言葉で遠慮した。
でもコウは許してくれないみたいだ。
耳元に唇を寄せると囁くように意地悪を言う。
「だーめ」
そう言うと「ふふっ」笑い、首筋に舌を這わせる。
コウの舌は生温かくて、その動きはとてもゆっくりで。
耳元と首筋を何度と往復する。
それは何とも言えない快感で触れる度にゾクゾクして体の力が抜けてくる。
「あっ。…もう…やめ…て…」
気がつくと私は目を閉じて、まるで自分ではないような色っぽい声で許しを請えていた。
それでもコウは止めてくれない。
一旦、離れたかと思うと、もう片方の耳元に唇をあててチュッと音を立てる。
そしてまた囁いた。
「ミウがわかってくれるまで、ずっと続ける」
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