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家に帰ると電話の前でじっと立ち止まっていた。
時間は夜9時。
先輩からダーリンはいつも帰るのが遅いって言ってたけど、あまりにも遅い時間に電話をする事は失礼だ。
だから帰っている事を願いつつ電話をしようと思っているんだけど…。
なんだろう?この緊張感。
直ぐにでも掛ければいいのに受話器に手を伸ばせない。
電話を掛けるなんて難しくないし、相手の顔も見えないんだから特に緊張する事ないのに…。
ダーリンの顔も知っているし、話した事だってあるんだぞ。
それなのにどうした?あなたらしくない。
…と自答するけどさ。
なんかダーリンがどんな反応をするのか怖い。
だってあの人いつも無愛想なんだもん。
さらっとおまえには関係ないだろ!って言われそう。
…はぁ。って溜息出ちゃうけど、そうも言っていられない。
先輩の為に一肌脱ごうって決めたのは私だ。
玉砕覚悟で電話してやる。
私は「ふぅ」と一息吐くと一気にプッシュボタンを押した。
コール音が1回、2回と耳に響く度に心がドキドキしてくる。
ダーリンが出たら、こう言おうと頭の中でシミュレーションされていく。
シミュレーションが進むと同時にコール音が増えていく。
…電話に出ない。
そのうち留守番電話のアナウンスが聞こえてくると私は電話を切った。
その途端に心に安堵感が広がる。
留守だ。きっとまだ帰ってきてないのだろう。
…はぁ。いなんだぁ。じゃあしょうがないよね。
って「はぁ」じゃない!留守電入れてないし!!
もう一度受話器を取ると再度ダーリンの家に電話を掛けた。
今度は留守電を入れればいいと思うと気が楽なんだけど…
留守番電話のアナウンスではなく、ダーリンの声が聞こえてきた。
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