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『我が子ながらもう少し愛想良く出来ないのかしらね~』
受話器から聞こえてくる声に、ヒロはむっとした。
「これでも話した方だよ。知らない人と話すのは緊張するし、変な汗かく」
『ん~、一人っ子じゃなく兄弟にするべきだったかしら』
「それは僕に社交性が皆無って言いたいの?」
『良く分かってるじゃない』
あっさりとした肯定に、ヒロはがっくりと肩と首を落とす。ため息を一つ吐いて気持ちを切り替えた。
「それで、なんで僕にかの……彼の事を話したの?今までこんなのなかったのに」
『今間違えたでしょ』
「……間違えてない」
天使の笑みを浮かべたアケルを思い出し、ヒロは胸を抑える。相手は男だと自分に言い聞かせるが、高鳴る鼓動は落ち着かない。
『まぁいいわ。ヒロに彼の事を話したのはちょっとした心配よ』
「……心配?」
『報せが来たのよ。彼の出身地、浮遊島は彼が島を出てから数時間後に――落ちた』
「落ち……そんな、はず」
『浮遊島が落ちるなんて前例は今までなかった。偶然かもしれないし関係ないかもしれない、それでも、なんだかタイミングが良すぎないかしら』
「……浮遊島がなんで浮いてるのかも詳しく分かってないんだ。それを意図的に、一個人の自由に出来るとは思えないよ」
『そうなのよねー。けど、これって何かの前兆に思えない?』
「前兆って、一体なんの……」
その問い掛けに、電話の向こうに居る母親は勿体振って、簡潔に答えた。
『時代の終わり』
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