アナタは女装が好きですか?はい、大嫌いです。

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正気に戻った女性に連れられ、アケルは学園の敷地内に有る寮へとやって来ていた。 寮は男子用と女子用とで別けられ、案内板にもそう掛かれているが、アケルは迷わず女子用の寮へと足を向けた。 「君はこっちよ」 「あーーれーー」 ぐわしとアケルの両肩を掴み、男子用の寮へと歩かせながら、普段から女性用を使っているのだろうか?と変に勘ぐってしまい、女性は深く考えないようにした。 男子用と女子用の寮の別れ道から歩いて約5分。アケルは高く聳え立つ建物を見上げていた。 「どう?世界で最も大きいと言われている寮よ?」 と、何故か得意気に言う女性は、次のアケルの言葉に表情を引きつらせた。 「わぁ~。大きくて、太くて、硬そう!」 「……貴方、それわざと?」 「え?何が?」 キョトンとした可愛らしい顔を向けられ、天然かと女性は呆れてため息を吐いた。 フロントで諸々の手続きを済ませ、女性はアケルに小さな鍵を手渡す。 「学園は三日後に始まるから、その時に迎えに来るわね。それまでは寮で過ごすも散歩するのも自由よ。貴方なら大丈夫だろうけど、お隣さんとは仲良くね?」 「は~い!仲良く(意味深)だね!」 なんだかニュアンスが違うような気がして、女性は念入りに釘をさす事にする。 「いい?くれぐれも、問題になるような事は慎んでね?」 「相手が慎まなかったら?」 アケルとしては、少しだけ困らせるつもりで言った言葉だったが、女性は華が咲くような笑顔で言った。 「潰しなさい」 何をと言わないのは、最後の良心だと信じたい。 女性に対して、初めて恐怖したアケルであった。
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