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一先ず疑問は後回しにして、アケルは天使の笑みを浮かべ、背景に花を咲かせる。
「初めまして!隣に越してきたアケルです!性別は――」
「男」
台詞を遮るようにして、眼鏡と同じ緑髪の少年はボソリと呟いた。
アケルは思わずきょとんとしたが、すぐ笑みを張り付ける。
「そう!よく分かったね!なんで?」
「別に……母さんから聞かされただけ」
緑髪の少年の言葉の意味を少し考え、すぐ始めに抱いた疑問と繋がる。
この少年は、アケルを案内した女性の息子なのだ。
「あれ?でも僕が来たのは昨夜だよ?」
「うん、だからほら」
玄関を開き、隠れていた片手に握られた受話器を見せられる。表示された文字は通話中、インターホンを押してからすぐに出てきた事に納得がいった。
玄関近くに電話機が設置されていて、対応中にアケルが来たためそのまま出てきたのである。
「お邪魔しちゃったね。じゃあ最後に、君の名前を教えてくれないかな?」
「……ヒロ」
「ヒロ君か、ありがと、またね!」
「うん、じゃ、また」
閉じられたドアの前に数秒佇み、アケルはようやく動き出す。顔には微笑を浮かべているが、その笑みはどこか、冷めていた。
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