ふたつめのよる

4/5
前へ
/12ページ
次へ
立ち上がった青年は、ミニコンポやテレビの置いてあるラックと、壁の間の隙間に、立て掛けてあるセミアコースティクのギターが入った、ナイロンのソフトケースをその隙間から出し、そのケースのファスナーを開け、中にある薄い黄色のギターを出し、そのギターを縦にした格好で、両手で軽く持ち上げ、ラックとベッドの間に置いてあるテーブルや、その上に置いてある物にぶつけないように、ベッドに戻り、少し体を斜めにし、ギターを横にした格好で抱えて、ベッドに腰を下ろした。 ベッドに腰を掛けると青年は、左手でギターのネックを持って、顔を右斜め下に向けた。 青年は自分の右側に置いてある上開きのメモ帳を右手でめくり、手を止めた。 青年は顔をメモ帳に向けたまま、ギターを爪弾き始める。 青年の左手は、コードC。 Cのアルペジオ。 一つ一つの音を確かめるように、低音弦。高音弦。中音域の弦。それらを優しく、ゆっくりと弾いていく。 その一つ一つの音が混じり合っていく。 青年の左手の指が動き、コードが変わる。 コードはG7。 G7のアルペジオ。 優しくゆっくりとした、混じりあった一つ一つの音が、部屋の中に小さく響いた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加