ひとつめのよる

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私は缶を手にしたまま、引戸を左右交互に開け、隣の部屋へ行き、灯りも点けずに、隣の部屋から入ってくる淡い光にぼんやりと照らされているベッドの上に座った。 手が冷たい。 私は缶を、ベッドサイドに置いてある、鏡を閉じているドレッサーの上に置いた。缶が何かに触れてガザリと音を立てた。 帰ってきた時、郵便受けから持ってきて、そこに置いた、携帯の領収書の入った封筒。 私は、それにかまわず缶を置き、ベッドの上に仰向けに横になり、目を閉じた。 何か疲れてるな……。 私は、余計な事を考え始めそうになり、そうならないように、虫の声に意識を向けた。 私は、無駄に動く思考を止めにかかった。
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