ひとつめのよる

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私は目を閉じ、虫の音と自分の体の隅々を意識した。 うまくいくと思った。 やがて、虫の音は遠くなり、自分の呼吸音が大きく聞こえ始め、私はその音に意識を集中した。 私の意識がだんだんと遠くなっていく。 宇宙。 私はそこにいる。 地球を見ている。 地球に近づいていく。 地球の中へと入り、私の意志に関係なく速度を上げ、私は雲を通り抜けていく。 日本列島が見え、吸い込まれるように更に私の速度は上がり続け、目の前の景色は関東地方、そこから私の住んでいる都道府県、私の住んでいる町、私の住んでいるアパートの付近の上空へと、次々と変わる航空写真のスライドのように、私の視点は切り替わっていった。
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