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「その時俺、ちょうど駅前のカラオケ店にいたんだ。
うちのクラスも初日打ち上げでね。
その待合室で、やけに大きい声で留守電にメッセージ残してる先輩がいてさ。
…奈良崎さん、だっけ」
「彩加が…」
「うん。『萌、どうしたの、どこに行っちゃったの』って」
わたしはポケットから携帯を取り出した。
彩加からのメールと、留守電のメッセージが確かに1件ずつ、残っている。
「その直後に、月子からあんな電話だろ。
これは何かあったな、て思った。
で、聞いたんだよ、萌をどうしたのかって。
――驚いたよ。ひどいよね、あんなところに閉じ込めるなんてさ。
しかも……俺に作らせた合鍵使って、鍵なんか閉めて。
バレたら俺まで共犯にされちゃうっていうのに。
自分のことしか考えないんだよね、あいつ」
更科くんは、心から呆れたような顔をした。
「じゃあ、…更科くんが合いカギを作ったのは…」
「そう。…月子から頼まれて、ゆかりちゃんを脅して作らせたの。
頼まれて、というよりは、命令されて、って言った方がいいのかな」
「いくら頼まれたからって、…どうしてそんな…」
「月子はとにかく、言い出したら聞かないんだって。まあ、今まで甘やかして来た俺が悪いんだけどね。
何に使うか、目的を聞いても絶対に言わなかったけど、……萌をこうして閉じ込めるためだったのかもね」
「…わたしを…」
『閉じ込める』という言葉に、すうっと血の気が引いて行く。
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