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「でも、…だったら、体育倉庫の鍵だけあれば充分じゃ…」 「今回はたまたま火事で出入り自由だったけど、本来なら体育館の入り口の鍵も必要だろ」 「…あ…」 「確か、2年前にあの体育倉庫で生徒が事件を起こして、それ以降体育館の戸締りは特に厳重になったって聞いたけど。 普段は部活利用が終わったら即施錠、じゃなかった?」 「……」 思わずびくびくしながら更科くんの表情を窺ったけれど、…彼の言葉に含みは感じられず、あの事件の詳細を知っているわけではないようだった。 「どこまで話したっけ。…ああ、そうそう。  …月子から、萌を倉庫に閉じ込めたって事を聞きだした俺は、すぐに耀ちゃんに連絡を入れたんだ。 萌を助けに行ってやってほしいって。…ね、耀ちゃん」  白井さんは少し目線を動かしただけで、その声には応えなかった。 「耀ちゃん、てば」  更科くんはその反応に不満だったらしく、ふてくされたような顔をした。 「耀ちゃんも一緒に喜んでくれなきゃ。 こんなに思い通りに事が運んでるんだからさ。 自分だけ急にお利口さんになっちゃって、ズルイよ。 協力してくれるって言ってたのに、結局何もしてくれないんだもんな」  驚いて顔を見ると、白井さんは眉間にしわを寄せ、顔を伏せていた。 「白井さん、…どういうこと…?協力って…。二人で、何をしようとしてたの…?」 「教えてあげるよ」  事もなげに、更科くんが言った。
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