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「出来れば、ずっと閉じ込めたままにして…。
月子の罪を少しずつ重くしていく過程を楽しみたかった。だけどさ」
更科くんは白井さんに視線を向けた。
「耀ちゃんが、……どういうわけか、本気であんたのこと大切に思ってるみたいだから。
俺もそこまでは、出来なかったんだよね」
思わず白井さんの顔を見ると、その目は後ろめたそうに伏せられた。
「ごめんね、萌に恨みがあるわけじゃないんだ。
俺たちの最終的な目的は、あくまで法に触れることなく、月子を苦しめて、追い詰めて…めちゃくちゃにしてやることだったから…」
わたしは更科くんの顔を見つめた。
そこにいるのは、…いつも放送部で見る彼とは、全く別人のように思えた。
彼は、どれだけの涙を流したのだろう。
そして、いつ、その涙を怒りの源へと変化させる術を知ったのだろう。
今、更科くんが背負っているのは…。憎しみという、真っ黒な悪意。
愛する人を失った、深い悲しみ。
そしてきっと、…永遠に叶う事のない、…美雪さんへの、恋心。
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