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 わたしは、白井さんのことが、すごく好きだった。  そして…彼の心を、少しでも救ってあげたかった。  あの人はいつも、…傷ついた事を誰にも悟られずに、あの部屋に帰って一人、心の綻びた部分だけを黙々と修理していたのだと思う。  その背中は、…きっと今も、とてつもない孤独の中にある。  白井さんの気持ちに応えられないわたしは、結局、何一つ、白井さんにしてあげることが出来なかった。 「よーしよし。おりこうおりこう」  泣き声を上げるわたしの背中を、彩加がごしごしと擦る。  これからも白井さんは、…あの部屋に美雪さんの写真を飾ることなく、色々な人に嘘をつきながら、生きて行くのだろうか。  今夜も、ニコニコと笑顔を浮かべながら、…器用なようで、きっと不器用なあの指先で、自分の心の傷を、せっせと修復するのだろうか。 『ばいばい、萌ちゃん』  あの時、…まだ、帰らないで、と…。  午後の放送も、聞いて行って下さいねと、…言ってあげればよかった。  最後に見せた白井さんの笑顔は…。  わたしに、もう少しだけこの場に引き止めてほしいと、願っていた。
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