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「…先生…」
「ん」
「…もっと…」
そう言って自分から唇を重ねようとした時。
ドゴン、という大きな音が響いて、わたし達は反射的に身体を離した。
身を固くしていると、しばらくして、うーーーーん、という呻き声が和室の向こうから聞こえた。
…大樹さんの、寝返り…。
「暴れてるな…」
先生は呟いて、缶をテーブルにカコンと置いた。
「襖に穴でも開けたら困るから、ちょっと見て来る」
そう言って、ゆっくりと立ち上がる。
春山先生が和室に入って行くと、わたしは長く息を吐いた。
…やばい…。
…お酒を飲んだ先生の色っぽさ、ハンパない…。
ていうか、…あの目は、反則でしょ…。
先生の囁く声が耳元に蘇えると、胸の奥がざわっと騒いだ。
そして、はたと気づく。
…わたしってば…。いくら頭の中が真っ白になったからって…。
…『もっと』とか、言っちゃってんの。
思い出した瞬間、顔がぼわっと熱くなる。
…わわわわっ。…恥ずかしい…。
なんか、これじゃ、Hな子みたいじゃん…。
抱えた膝に顔を埋め、うにうにとおでこを擦りつける。
あ…。ほんと、恥ずかし…。
…先生、どう思ったかな…。
わたしが一人でくにゃくにゃしていると、和室の方から、ドタバタ、という畳を打ちつけるような音が聞こえた。
驚いて顔を上げると、再び、バタバタ、と暴れるような音がして、…それきり、静かになる。
「……」
その静寂に不安を感じ始めた頃、開いていた襖の間から、春山先生が出て来た。
襖を閉め、なぜか不機嫌そうな顔で戻って来る。
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