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「…あの…」 「…うん」 「…ね、先生…」 「ん?」 「せんせ…」  顔がどんどん近づいて来て、ちゅ、とキスされる。  …もう…。…全然、聞く気、ないし…。 「ね、…聞いて…」 「…聞いてるよ」  言いながら、再び先生の顔が近づいて来たので、わたしは先生の唇に指先を当て、ぴたりと止めた。 「…待って…」  口を押さえられた先生は、急に大人しくなって、黙ってわたしの顔を見ている。 「なんて、答えたの?…わたしを譲ってくれって言われて、…先生は何て…」  先生は、自分の口元に添えられたわたしの手を掴んで、あっさりストッパーを解除した。 「…丁重に、お断りしたよ」  手を握ったまま引き下ろし、顔を寄せる。 「…お前を譲れるわけ、ないだろ…」  独り言のようにポツリと言って、先生はわたしの唇を塞いだ。  …先生…。  わたしは先生の手をきゅっと握り返した。  …大好き…。  挿入って来た先生の舌は、ビールで少し冷たくなっていた。  味は、確かに苦いのに、…先生のキスが、とても甘くて…。  ほんのり漂うお酒の香りで、くらりとめまいを感じる。  …酔っ払いそう…。  お酒なんて飲みたいと思ったことは無かったけど、…こんな夢見心地になれるなら、好きになれるかもしれない。  二人きりの広いリビングに、舌を絡める音と唾液を吸う音が、やけに大きく響く。  それが恥ずかしくて堪らないのに、…先生を欲しがる自分を止められない。  横に並んで座ってキスしていたはずなのに、…気付くと、わたしの身体は背もたれに押し付けられて、先生の重みを受けていた。  二人の身体のぴたりと重なった部分が、熱く、熱を持ち始める。
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