第1話

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 見事な駄目人間ルーチンである。  というか、大学生の自分である。  一年の空白期間があったとはいえそこからよくもまあ、社会人になれたものだ。その空白期間こそが社会更生の期間だったとも言えるけど。丁度一年前なのだ。コスプレイベントに参加するようになったのは。  当時の感覚としては物見遊山どころか、むしろ半ば嫌々だった。それは自分の気持ちでもあり友人Hの気持ちでもあった、と思う。人の心なんてそう推し量れるものではない。ましてや自分には人の心なんてとてもわかりはしない。ただ、そういう風に言っていたのだけ記憶している。  Hというのは中学から付き合いのある古い友人で、唯一頻繁に連絡を取り合う相手でもある。そもそも男は誰しも友人と大して連絡を取り合わない生き物なので決して交友関係が絶望的じゃない。高校の友人とだってたまに連絡を取る。ここ数年連絡を取ってないだけで。  交友関係は狭く深く。  そういうところでHと馬が合ったのかどうかはさておき、今日に至るまで交友関係は続いてる。はじめましての記憶が無くたって今友人ならそれでいい。まあ、いくら友人でも無理矢理イベントに参加させられたら嫌がるのは当然なんだけど。  ただしコスプレに興味が無かった訳ではない、らしい。  事実、誘った時点で既に巫女服を何故か所持していた。  Hが嫌ったのはどちらかといえば人の方だった。他人とコミュニケーションを取れる人間では無いのに、そんな他人から声をかけられる可能性のある場所に行くなんてそりゃ嫌に決まってる。自分だって嫌だ(一年経った今でも誘われないと行かないのはその為である)。それでも最終的にはごり押しした感じで無理矢理参加させたのだけど(他にも参加を拒んだ理由はあるが名誉の為に割愛。数少ない友人をこの様な形で失うのは本意ではない)、結果から言えば良かったのだろう。一年越しの結果論だけど。  今となってはレイヤー同士でコミュニケーションも取れるし、初対面の相手でも積極的に話しかけたり一緒に写真を撮ったりと、眼を見張る成長ぶりである。どころか、Hの先輩とその妹君(人見知り)をもコスプレの世界に誘い入れてしまうのだからそら恐ろしい話である。  一番恐ろしいのは二人を招いたのが初イベントを終えた翌月だったということだけど。  類は友を呼ぶ。
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