第2話

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 「無駄なんだからやめちまえ。やる気ないんだから時間の無駄だ。やめろやめろやめろ」  ■   ■  Hやその先輩、妹君がコスプレイベントに参加するきっかけを作ったのは紛れも無い自分であるが、そのきっかけがなくとも遅かれ早かれ参加してたんじゃないかと思う時がある。三人とも元々コスプレに興味があったのは間違いないだろうから、近場でイベントがある事を耳にすればわざわざ背中を押す必要も無かったんじゃないのかと。  逆にもし既にイベントに参加していたら三人とイベントに出向くことも無かったのだろう。そう思えば、良い頃合だったのだろうと思えなくも無い。  思い立ったが吉日。  まあ、それも就職決まらぬまま大学を卒業してしまい実家に無理矢理連れてこられた経緯がある事を考えると総じてプラスとはあまり言えないかもしれないが。かもしれないが、これはこれ、それはそれ。過ぎた事は終わった事である。  大学は岩手の公立大学を卒業した。卒業なんて響きはいいが実際には就職留年に失敗したクチである。本当は就職留年をして翌年も新卒として就職活動しようと目論んでいたのだが、そんな目論見は親によって簡単に崩された。学費を払ってるのが親で、生活費を出してるのが親で、家賃を振り込んでるのが親である以上、当然と言えば当然なのかもしれないが、それでも理不尽さを感じずにはいられなかった。  入学して一人暮らしのアパートを決める際に「バイトはしなくていいから学業に専念しろ」と言い放ち、大学から近い代わりに半径三キロ圏に店がほとんど無い雪深い山中の安いアパートを選びながら、一年後には「生活費くらい自分で稼げ」と生活費を減らされて、理不尽でないなんて言えるはずもない。三年生になる頃には生活費なんて三ヶ月に一度三万円と食料品と、どこかの番組も真っ青な生活を強いられていた。  当時の食生活と言えば豆腐ともやしを中心としたヘルシー精進料理か、もしくは近くのコンビニで売られていたパンの耳がメインで、食費は月五千円以内、残りのお金で雑費や就活の交通費に割り当てていた感じである。
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