第2話

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 買い物は三キロ以上山を降りた所のスーパーなのだが、これがまた辛い。当時も今も足は常に自転車一つしか無いので、大量の買い物をしたら重い荷物を背負って自転車で山を登らなければならず、日常の買い物がかなりの運動になっていた。冬になるとそこに大雪が降る。場所が田舎という事もあって歩道が除雪されるのは雪が降っても数日後、除雪されない日もそう珍しくは無い。バスに乗ればほんの数分でも、交通費を出せる余裕なんて全く無い為(当時は交通費片道でもやし六袋買えた。パンの耳なら一週間分だ)、雪に埋もれるタイヤをなんとかペダルを漕いで進ませて買い物をしていた。たまに解けた雪がタイヤに凍り付いて遭難しかけたけど。  それでも実家暮らしと比べれば自由があって幸せだった。  それだけが生きる糧だった。とか思ってたけど、今振り返ると人格とか人間性に問題がある。  ただのメンヘラだ。  そんな人間が四年もの間まともな人間関係が築けていたかといえばそんな事は当然無いのだ。あるわけがない。学食でお昼なんてリッチな事が出来ず(家に帰って冷や飯に塩か七味をかけて空腹を満たすか、昼を抜いて午後の授業に挑んだ)、趣味やサークルに参加できる余裕も無い人間が一体どこで交友が生まれるのか。  幸か不幸か、単独行動は高校デビューに失敗した時から慣れていたので、独りである事に対する劣等感は無かった。対人恐怖症の自分にとってはむしろ分高校時代よりずっと気が楽でよかったのかもしれない。  気楽な反面、暇だった。  自転車でいくら走れど周りは山ばかり。当時は一眼レフなんて持ってるはずも無く、遊びに行く友人もいなければ遊びに来る友人もいない。ゲームも実家に置いてきて、唯一あるのはネットに繋がったデスクトップパソコン。  最初は実家の低スペックパソコンと低回線ADSLからパソコンも回線も一新して喜んでネットサーフィンをしてニコ動を見ていたものの、受動的な事ばかりじゃ流石に飽きる。そこでまだ金銭的に余裕のあった一年の冬、ヤフオクで中古ゲームを手に入れる事にした。狙っていたのはWiiである。  当時はまだPS3が高く、Wiiが比較的狙い目だろうと思っていたのでこれに的を絞り、適宜入札をしていった。落札目標は一万円。
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