風の都フォルトゥーナより

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「おい、肉を早く冷蔵庫に入れとけ」 奥から貫禄のある声が聞こえた。 この店の主でツエーテンの師匠でありエリアの父、ハックスの声だった。 ハックスは18歳で料理の本番、『味の都市ヒチリアーナ』で修業を積んだ。 その腕は高く評価され、ヒチリアーナの名店『エル・レアル』で40年間も料理長を努めていたほどだ。 『エル・レアル』はヒチリアーナ料理をはじめ、各地の家庭料理や伝統料理を提供している。 やや値段は高いが、アーバルデン国王もお忍びで来店したほどだ。 国内外から支持を集める名店の元料理長。 その弟子になれたことをツエーテンは誇りに思っていた。 「はあい。あ、ツエーテン」 エリアがなにかをツエーテンの手の平に乗せた。 それを見てツエーテンは、エリアが何をしたいのかすぐにわかった。 「その子、お腹空いてるみたいなの。ご飯よろしくね」
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