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団長はヘタレだ。
どうしたものか、あまりの威厳の無さに観客は大多数がただの司会者としか思わないことが常である。逆に、衣装やら面持ちからナイフ投げが団長だと思い込む客が多い。
「俺は団長じゃない。」
凛々しくも整った顔、気さくな演技をこなすナイフ投げはどこへいっても大人気だ。
赤い声援の中、時折聞こえる『団長』という叫び声に、ナイフ投げが小さくごちた。
仲間にしか聞こえない大きさではあったが、表情はぬかりなく笑顔だ。
サディストという性格から培ったスキルであろう。
「わかってると思うけど、」
「はいはい。」
観客の期待は壊さない。それがこのサーカスの理念だ。毎度のことながら仕方ない、と周りを見回しても誰もが静かに頷く。
「なんのこと?」
この男以外は。
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