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「……失礼しまーーす…」  カラカラカラ…と引き戸を開け、中を覗く。 「…ゆかり先生…?」  声をかけても、返事は無い。保健室は、無人のようだった。  …いないんだ。困ったな…。  わたしは時計に目をやった。  お昼休みは、まだまだ充分に時間を残している。  少し待ってみようかな。鍵をかけてないくらいだから、きっとすぐに戻って来るはずだし…。  わたしは保健室の中に入って、後ろ手に戸を閉めた。  中程まで進み、丸椅子に腰かける。  …いたた…。  わたしは、お腹の鈍い痛みに顔をしかめた。  普段、生理痛はあまりひどい方ではないのだけれど、…今回は、勉強疲れのせいなのか、いつもよりも痛みが強い。  あいにく、彩加やマリたちも痛み止めの薬を切らしていたので、仕方なく、保健室にもらいに来たのだった。  綺麗に片付いた室内をキョロキョロ見回すうちに、…ふと、デスクの深机に放り込まれた、黒いヒップバッグのことを思い出す。  まさか、…未だに入れっぱなしにしてるって事は、無いよね…。  目を逸らしても、…一度気になると、どうしても目が引き出しに向いてしまう。  …ちょっと、覗くだけ…。  わたしは入口の方を振り返り振り返り、デスクの方に進んだ。そおっと手を伸ばし、取っ手に手をかける。 「あ、ドロボー」  突然声がして、わたしは飛び上がった。  尻もちをつきそうになり、何とか持ちこたえ、振り返ると…。  ベッドに横になった更科くんが、頭の後ろで両手を組んで、こちらを見ていた。
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