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「…び、びっくりした…」  見ると、ベッドのカーテンは半分閉じられ、入り口側からは見えないようにうまくカモフラージュされている。 「…萌って、窃盗癖でもあんの?」 「…ち、違うの!…薬、貰いに来て、それで…」 「ふうん。…何の薬?」 「あの…。…えっと、頭痛の…」 「…ゆかりちゃんなら、戻って来ないよ」  更科君はそう言って、布団を被った。 「午後から献血の手伝いで、隣の高校に行ってる」 「え。…鍵、開けっぱなしで?」 「俺が留守番、引き受けたの」 「生徒が留守番なんて…」 「ちゃんと可愛い泥棒、見つけたでしょ」 「……」  更科くんはニッと笑顔を見せ、ゴソゴソと深く布団の中に潜り込んでしまった。  …なんか、…普通に話せてる…。  わたしは、盛り上がった布団をじっと見つめた。  あの夜以降、更科くんと口をきいたのはこれが初めてだ。 「…なんか、久しぶりだね」  無視されるかな、と思ったけれど、更科くんはモゾモゾ、と動き、ひょこっと顔を出した。 「…それは、萌が放送室に全く顔出さないからじゃないの。…引退しちゃうと、冷たいもんだね」  冷やかすような口調は、依然と変わり無かった。
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