背中だけの被写体

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ちょっとムッとする。まるで年上扱いされていない事も、だけど。そのフレンドリーさに。いくら被写体になる事をOKしたからって、別に親しくなる事まで許可したわけじゃない。外国育ちだからといって、許せる範囲じゃない。パーソナルスペースは、保ちたい。 失礼にならない程度に手を掴むと笑顔を浮かべながら、外す。忠告と共に。 「私は親しくない人にこういう事をされるのが嫌なので、もう少し距離を保ってもらって良いですよね」 お願いじゃなくて強制だ。これくらい言わないと解らないみたいだから、はっきり言わせてもらった。山崎さんは驚いた表情で、外された手より、私をジッと見る。 何よ。失礼だから、失礼。って言う事の何処が悪いの。 その視線を真っ直ぐ受け止めると、山崎さんはニッコリと笑った。 「なんか、舘野さんっておとなしいっていうか、オドオドした人かなって思っていたけど、自己主張はきっちり出来る人なんだね。今の方が、俺は好きだなぁ」 悪びれもしない上に、然りげ無く何を言っているのだろう。呆れてしまう。でも、はっきり言う事は久しぶりで、私も少しだけリラックス出来た。 「あ、その表情! 良いかも。じゃあそのままで。撮影始めます」
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