背中だけの被写体

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月に1度、自分にご褒美をあげる。外食だったり、ブランドの商品を買う事だったり。その時その時でご褒美は変わるけれど。 今日は撮影なんて慣れない事をやるのだから、その終わりに自分にご褒美をあげようと考えていた。 その為には、さっさと終わらせてもらわなくては。休憩を挟んで、結局撮影は6時間くらいかかった。結論。プロのモデルならともかく、ど素人の私は、もう二度とやりたくない。こんなに疲れるなんて……。どんな世界もプロって凄い。私、無理。ずっと笑顔を浮かべて。決まったポーズを何通りも撮り続けて。疲れないのかしら。 ……。 まさか、年齢のせい? それはそれで、ちょっとショックではあるけれど。まあモデルになるわけじゃないから構わない。兎にも角にも終わった事に安堵して、後日、写真を送りたいから住所を教えて欲しい、と言われた。確かに出来上がった写真は見たい。紙に住所を書いて教えた。 「お世話になりました」 挨拶を終えて、さぁご褒美! と思ったのも束の間。 「あ、舘野さん。この後用事有りますか?」 山崎さんに声を掛けられた。ええ、ちょっと……。と曖昧に濁して会釈する。これ以上、煩わされるのはご免だった。
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