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ポンプアクション式の散弾銃に一粒ずつスラグ弾を親指で押し込め、その小気味良い音を堪能していく。
私にとって安心させてくれるこの音は、扉1つを隔てた向こうの部屋にいる彼らには聞える由も無い。
今日も私の仕事が始まろうとしている。
運悪く弾丸が目玉を抉らないようにと肌身離さず身に付けているお守りの十字架が、電灯の錆びた明かりを受けて鈍い色で照る。
右手首に視線をやると、ガスマスクのレンズを通して拡張現実(AR)の淡い緑色に光る腕時計が午後11時57分と気温マイナス4度を示している。私のフィルターから吐き出す吐息は白く濁ってしまう。
高層ビルだったはずのものの38階の一室だというのに、ここは冷気と放射能が満ち溢れていた。
右耳に挿しているイヤホーンからガイガーカウンター(放射能検知器)のガリガリガリという煩い検知音が、しつこく鼓膜を引っ掻いている。
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