報酬の使い道

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11時58分。いつも過ごしている地下シェルターの中なら緊張を和らげる為にウォッカをワンショット飲みたいところだが、ガスマスクを取るわけにもいかないため、私は溜め息を吐くしかない。 防弾ベストの胸のところに着けたホルスターに、愛用の古ぼけた拳銃があるのをまた確認する。2分 に1度は確認している。 ウォッカが無いのだから、代わりに私を安心させてくれるものはこの拳銃の存在とスラグ弾を込める音だけだ。そして、スラグ弾はもう込め終わった。 手筈通りならば先に私の"シモベ"が突入し、ヤツらを混乱させる。私はそこへ堂々と殴りこむだけだ。 しかしこれからの乱暴な解決方法のことを考えるのは止めることにした。 私は残り残りの一分の間を、今回の仕事の報酬の使い道を考える事に費やそうと思う ―― 余裕なわけじゃない。あまり考え過ぎると、かえって恐怖を感じそうになるからだ。 11時59分に数値が変わる。私に異能的な感覚が、遠方より急速に接近してくるオーラを感じ取る。手筈通りだ。 だから私は安心して彼のことを考えられる。私の想い人の彼は、裏業界の仲介人だ。 3年ほど前に凶悪な日本のマフィア ―― 確かヤクザといった連中を敵に回してしまったときに、助けてくれた。 それがきっかけで私は彼とよく仕事をするようになり、彼のために暴力と銃弾を振る舞い、彼は私のために手回しをしてくれた。 関係も幾度も持ったが、後悔なんてしていない。他の男たちは全員下衆同然に見えるが、彼だけは違うのだから。 だけど彼は1年前とてつもない資金難を理由に、私たちが活動していた地下シェルターを離れなくてはいけないと言った。 大金が手に入ったら絶対に戻ってくると、言ってくれた。暴力と裏切りの世界で生きてきた私にとって、彼は光だ。 そしてこの仕事の報酬をこの半年間で貯めた額に加えれば、彼の捜索の資金と彼の資金難を助けれる金額に到達するのだ。 彼もウォッカがとても好きだ。だから、まずは一緒に飲もうと思っている。 私が彼に追いついたときの彼の驚く顔を想像すると、少しにやけてしまう。
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