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0時00分 ―― 私のイヤホンが骨伝導の音で静かにアラームを鳴らした。
凄まじい爆発音が扉越しの部屋から響き渡り、阿鼻叫喚の渦が隣部屋の私にまでしっかりと届いた。
”火炎の精霊だ!誰か防護陣の描かれた布を用意しろッ!”と誰かが叫んでいる。
だけどもう彼らは遅い。私は扉のノブを握り、少しだけ押し開き、ブーツの底で全力で扉を蹴り飛ばす。
扉の近くにいた短機関銃を持った男を突き飛ばされ、慌ててこちらを振り向いた散弾銃を持った男の腹にスラグ弾を撃ち放つ。
その男は声にならない悲鳴を漏らしながらソファを背中で押し倒して盛大に吹き飛ぶ。
仕事の標的は1人。ここで密かにパーティーを開いている、裏業界の大物だ。
聞くところによるとここ一年くらい前に現れて、瞬く間に力をつけたらしい。
他のエキストラたちは全て私と契約した一時的なシモベの炎の精霊が焼き尽くしている最中だから、1人だけ唖然としてソファにふんぞり返っている男がそいつだと直ぐ分かった。
そしてそいつの横には女がいた。裸の女で、そいつにガタガタ震えながら抱きついている。
そいつの足の間には、恐らく寸前まで男のそれを咥えていただろう商売女がいる。
そして、そいつの顔には、私にはあった。女にモテるのに、納得した。
そして今日の仕事の報酬は、全てウォッカになってしまうことを悟った。
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