第1話

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   雷のせいで真っ暗になってしまった部屋で僕は息を殺す。  自分の部屋にも関わらず、だ。  天井の蛍光灯が消え、エアコンも消れ、キッチンの冷蔵庫の冷蔵音も消えている。窓ガラス1枚を隔てた外で打ち付ける雨音と、時折響く雷が音源のほとんど。  しかし、僕しかいないこの部屋に、僕以外の息遣い。  だから、その存在を確かめるため、息を殺す。  一閃。  雷の光がカーテンの隙間から差し込む。  その一瞬の光で僕は確信した。それの存在を。確信というより、この目で確認した、が正しいけど。  雷鳴が轟く。  瞼に焼きついたそれは、僕より頭一つくらい小さかった。そして、黒々とした長い髪にほっそりとした体。そう。  それは、女の子だった…。  女の子の姿をしたそれは、大きな目で、僕を見上げていた。
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