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暗闇でのパニックとは別のパニックが僕を襲う。
「な、何してんの?そんな恰好で!」
尻もちをついた体を半分ベッドに預け、顔を背け壁を凝視する。とりあえず、裸を直視することは回避した。
「っていうか、何でここにいるの!?」
しかしこれじゃあ、裸で油断させて泥棒します、という作戦だった場合、完全に相手の思うつぼだ。
でも、向けないものは仕方ない。
「……さっき、いれてくれた」
か細い声が聞こえてきた。女の子が発した声だ。
パニック継続中の頭で「いつ?」と返す。
「くらくなるまえ。ここから」
コツンと音がした。この音、多分、窓だ。
停電する前に僕が窓から入れた、と言っているらしい。いやいやいや、そんな記憶、僕にはない。たとえ一階だろうと、女の子を窓から入れるようなことはしないし、一瞬見えた顔は知らないものだった。
入れるわけがない。
「しかたないな、っていれてくれた。あまやどりしていけって」
仕方ないな、雨宿りしていけ…?
少し前の記憶を辿る。……確かに言った。この豪雨が始まったばかりのときに。でも、言った相手は女の子じゃない。
気付いたら部屋の中をヒラヒラ飛んでいた、
「蝶?」
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