第1話

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 正直、蝶が人間になったなんて信じてないけど、もし、この子が蝶だとしたら、人間の言葉ってどれくらいわかってるんだろうか?  さっきから発している言葉はたどたどしい。とすると、人間の姿をしていても、人間の言葉や道具はあまり理解していないと考えたほうがいいのか?  右手を一旦引き、女の子に背中を向けたまま立ちあがる。タオルケットを広げ、自分の体をすっぽり覆うようにまとわせる。てるてる坊主みたいに。  「これと同じことできる?」  そう付け加え、さきほどと同じようにタオルケットを女の子に差し出す。  僕の右手からタオルケットがなくなり、衣擦れの音がし出し、ややあって…。  「これでいい?」の声。  ゆっくりと振り向く。すると、女の子は、てるてる坊主のようにタオルケットを首から下にまとっていた。  「うん、いいよ」  ただし、タオルケットが黒いのと、つやつやした長い黒髪もまとめて巻いているのとで、色白の顔だけ浮いた、黒いてるてる坊主になっている。  さて。  話もしたいけど、裸のままはやばい。  ここまでのこの女の子の振る舞いと武器などを持っている様子がないことから、こちらに危害を加える気がないと判断しよう。  ということで、よし、まずは服を着てもらおう。
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