第1話

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 「君が着られそうな服を探すから、待ってて」と、ベッドの足もとに置いてある衣装ケースに向き直る。  そのとき、エアコンからゴゥ、という冷気を吐きだす音が聞こえてきた。風量を『自動』に設定しているから、室温を管理して冷気を送りだしたのだろう。  そういえば、室温が適度だ。  あたりまえだけど、蛍光灯と同じく、電気の復旧でエアコンも仕事を再開していたに違いない。  続いて、窓に打ち付ける雨音が耳に入ってきた。エアコン同様、続けざまのパニックで気付けなかっただけで、まだ雨は降っているようだ。  停電のときよりも雨音が小さくなっているし、雷も鳴っていないところをみると、もう少しで止みそうだ。  いつもの精神状態くらいには、落ち着いた。  ふう、と息を吐く。  さて、服を選ぼう。  衣装ケースから選んだインナーとTシャツとハーフパンツの三点セット。  「これ着てほしいんだけど、着方わかる?」と、三点を差し出したところ、黒いてるてる坊主は、案の定キョトン顔。  だから、仕方なく……。  僕は頑張った!!
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