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四苦八苦しながら服を着せるのに要した時間は、約二十分。その後、彼女を勉強用の椅子に座らせ、窓を開けて、エアコンを切った。二十分の格闘中に雨が上がったからだ。
椅子に座る彼女と数メートル距離を取り、僕はベッドに腰掛けた。やっとゆっくり話ができる。
「もう一回聞くけど、君は蝶、なの?」
「うん、そう。あなたをおって、ここにきた」
僕を追って?どういうことだろう。
「間違ってこの部屋に入ってきたわけじゃないってこと?」
コクン、と頷く。
蝶、蝶……。僕は直近の記憶の中に蝶を探す。
……。
「あ」
いた。しかも、今日。バイトに行くときに、どこかの家のプランターの花にとまっていた。
「今日の朝、プランターの花に黒色と黄色の蝶がとまってるの見たけど、あれ、君?」
「うん。あなたのうしろ、とんでついていった」
「ってことは…。夕方、似たような蝶が店の勝手口にいたけど。あれも、君?」
「うん」
「僕の後ろ飛んで、この部屋まで来たってことか…」
蝶によるスト―キング。新しいな。……じゃなくて。
今日は、行きは歩きで帰りは自転車だった。理由は、昨日の雨。
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