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チャイムが鳴り終わると、ゾロゾロと生徒が教室に入ってくる。
巫女たちはお弁当箱を持ち、自分の席に着く。
教科書を机の上に出し、一息つき顔を上げる。
「ッ…」
顔を上げれば晶の姿が視界にはいる。
視界に入るたび、心は高く鳴く。
「ッ…」
苦しさを感じる。
切なさを感じる。
どんなに想っても、近づくことはできないんだ。
「はぁ…」
静かに漏らすため息。
切ない気持ちが詰まったため息は 普段のため息よりも熱い。
「水上さん、あの…なんかあった?」
「えっ…?」
男の人の声が聞こえ、顔を上げる。
前の席の板谷 尋が心配そうに巫女の顔をのぞき込む。
「元気ないし、最近ため息ばっかりついてるからさ…心配で…。」
メガネのレンズの奥には尋の瞳が見える。
その瞳は決して明るいものではなく、どこか怪しい光を放っている。
「あ、ありがとう!でも平気!勉強してるから、あんまり寝れなかっただけ!」
「そかぁ…俺理科は得意だから、理科の解らないところは聞いてね?」
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