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エレベーターの位置は、今少年が身を潜めているフロントカウンターの正面。武装した12人の兵士たちを挟んだ奥にある。その扉がゆっくりと左右に開くのと同時に、兵士たちは機敏な動きで『まわれ右』すると、一斉に照準を合わせた。
――完全に開き切ったエレベーターの内部には誰もいない――
突然、カウンターに身を乗り上げた少年は、開きっぱなしになっているエレベーターの入り口へと走り始めた。
「うおおおおおっ!」
少年はその赤い瞳をギラつかせると、唸り声をあげて駆け出した。彼が手にしている剣から赤のエフェクトが輝きを放つ。
少年とエレベーターの間を阻むように立っていた三人の兵士が彼に気づき、すぐさま振り返る。――だが、少年の方が早い。
剣を横向きに薙ぎ払うと、一瞬で三人を弾き飛ばした。ダメージを表す赤色の数値が、薙ぎ払われた兵士たちの頭上に浮き上がる。
少年はその数値には目もくれず、そのまま疾走を続けた。その背中には、残り9名となった兵士たちが銃口を向けている。
ぱらぱらと小気味良いサブマシンガンの銃声が響くと、少年のすぐ脇にある透明なガラス製のオブジェクトを粉々に砕く。その破片を浴びつつも、かまわず走り続ける彼の右足に、1発の弾丸がめりこんだ。
「ぐあっ」
小さく息を漏らした少年はそのまま体をよろめかせ、地面を転がる。
――そのままエレベーターの中へ吸い込まれていく少年。
それを待っていたかのように、エレベーターの扉がゆっくりと閉まり始めた。
前回りの途中で壁に尻を預けた無様な格好のまま、彼はコートの内ポケットから一丁のハンドガンを取り出すと、がむしゃらに乱射する。
最初の一発だけ、敵のダメージを表す赤い数値が出現したが、それ以降は何も表示されない。そのままエレベーターの扉が完全に閉まりきるまでめちゃくちゃに撃ち尽くした。
少年を乗せたエレベーターがゆっくりと上昇し始める。ゆっくりと立ち上がった彼はようやくそこで安堵の声を漏らした。
「なんとか……エレベーター内にまでは入れたなっ!」
「アキは相変わらず銃がヘタッピだね!」
「ほっとけよっ」
アキと呼ばれた少年は、腕時計型のディスプレイに表示されっぱなしになっていた緑髪の少女をあしらうと、すぐに自分のHPバーを確認する。
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