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天井のに浮かぶ濃淡が揺らめく。
窓から射し込む光りはより強くなり、
カーテンに瞬いては床に照射される。
光線の上を僅かに舞った細かい埃が、
キラキラと浮游し続けていた。
覚めているのかそうでないのか分からない頭で、
天井を眺めながら考える。
何をと訊かれたら困ってしまうような朝の余韻。
今更に覚めた瞳を擦れば、
誘発されるように一つ、欠伸が出た。
まだ残暑の続くこの時期の朝は、
起きると額に前髪が貼り付いているなんてことはしばしばあった。
しかし、
今朝程に噴き出す汗に体を冷やしたのはそう多くはない。
寒さすら感じる中、
布団に肩まで埋めていたが、
何故かそれ以上に汗が流れることはなかった。
ねっとりとした夢の余韻は、
思い出しただけで鳥肌が立つ。
それでも、
はたしてどんな夢だったのか?
まるで見当もつかない。
既に日の出は過ぎ、
窓の外に視線をやればレースカーテン越しに朝日が目の奥を焼く。
堪らず額に手を持っていくと、
ひんやりとした感触と温んだ感触が入り交じり、
なんとも心地良い。
気付けば汗も乾いてしまっていた。
ふっと目を細めてみたが、
異様な明るさに頭が冴える。
今日はいつも以上に長居をしてしまった。
そのことに気付いて慌てて体を起こすと、
僅かに関節が軋んだ。
時計の針は6時半を回っていた。
急がなきゃいけない時間ではないが、
明け方に水を被ったような掻き方をした汗を洗い落とすような時間はなさそうだ。
私は反射的に腕を鼻に押し当てたが、
酷く汗臭い訳でもなければ、
体臭そのものは私自身で感知することは困難だった。
仕方がない。
顔だけにするか。
まだ少しだけ眠ったままの頭で、
顔を洗おうと洗面台へ向かった。
多少なりとも寝惚けていようが、
習慣となっている為危なげなくたどり着く。
蛇口を開けて水を流すと、
受け皿に広がって排水口を滑り落ちた。
その間に手を入れて遮ると、
水は皿状にした手のあちこちから溢れ出た。
ひたひたと手に水を馴染ませた所で両手で水を掬い上げる。
「冷た……」
一掬い顔に掛けた所で、
私は顔を歪めた。
電子標示を確認すると、
ガスが入っていなかった。
顔から垂れる水は、
首を伝って襟首を濡らす。
急に心が虚無感に襲われた。
分かってはいたけど、
全く『入れてない』。
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