立体的平行視界

8/13
前へ
/13ページ
次へ
そんな彼らを平然と見ている私は、 自分が思っている以上に不味い所まできているのかもしれない。 随分と馴れてしまったというべきか、 元から気味の悪いくらいに冷静だったと考えるべきか―― 異常である自分の存在を、 ちゃんと落ち着いて理解できる自分がいる。 物語の中の霊能力者とは、 きっとこんな気分なんだろうな…… 私は辺りを見回した。 誰にも見えない、私しか見ることのできない彼らは、 私しか見えてないといったように、 私だけを見ている。 人ならざるモノの視線は、 私を1秒たりとも自由にはさせてくれない。 四六時中視線を感じているのは、 気分がいいものとは呼べなかった。 軽く目眩を伴う倦怠感。 ふらりとした所で心配してくれる人物がいる訳でもなく、 またそのこと考えると尚更、 自分独りで何とかしようと奮起もした。 自然と寝れない夜が続いた。 何から考えればいいのだろう。 何処に突破口があるのだろう。 毎日同じ思いを繰り返している。 溜め息混じりに混沌とした住宅街の空を仰げば、 半透明なタワーのようなものが視界を遮った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加