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「……」
本を読む気分じゃなくなったので僕は栞を挟んで本を閉じた。
途端に暇になり、僕は窓の外を眺める。
今、電車は丁度橋の上を通過しているようで、車窓から川幅が広い雄大な河を俯瞰できる。緑色に濁って澄んでいない河だった。その河の河川敷にワゴン車が一台停まっていて、その近くでバケツを脇に置いて釣りをしているおじちゃんがいる。微塵も動かずに浮きが沈むその瞬間を見極めようとしていた。
やがて電車は橋を渡り終えて町中を走り始めた。
地元の人しか来そうにない寂れた電気量販店が、『スズキ屋』とギリギリ判読できる錆びに塗れた看板の 垢抜けない店が、建てられて久しそうな二階建てのボロいアパートが、平日のせいで賑わいのない静かな公園が、車窓の端から端へどんどん流れていく。
どれもこれも、高校入学してから三年間、毎日眺めている代わり映えしない景色だった。
『次は、××駅ー』
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