1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の降車駅を車内アナウンスが告げたので、三年の月日が色褪せさせた学校指定カバンを肩にからって電車の降り口に並んだ。
やがてポーンと音がなってドアが開く。そして改札を抜けて、学校に続く道を歩いていくのだ。
今日はどんな日になるだろうと、心中でそっと呟く。
どうせ、過去のどれかをダビングしたような日になるだろうと分かっていながら。
***
「───というわけで明日の連絡は終わりだ。日直。号令」
「きりーつ。礼」
クラスメイトがあーっしたー、と口を揃える。
「うし、気を付けて帰れよー」
いつも言っている社交辞令を零しながら担任が教室から出ていく。
帰りのホームルームが終わった。
「っ、あー疲れたー……」
僕は勉強で蓄積された疲れを解き放つように伸びをした。両椀の成す角度は六十度。背を反らして肘を関節いっぱいに開いて瞼を強く閉じる。
程良い所で今度は脱力して、やおら押し寄せてきた何とも言えない風情ある虚脱感に身を浸した。すーっと疲労が薄く伸ばされたような心地がした。
この瞬間が伸びの醍醐味だと思う。
さて。
やはり今日も今日とて変化のない学校だった。これぞ予定調和。
「……帰るか」
周りを見渡せば、級友たちはめいめいの友達の机に集まって今日どこ行くー?なんて放課後の予定に花を咲かせているけれど、僕の机の周りには集まってくる人はいなかった。ぼっちだった。僕のこの境遇についての考察は、すれば必ず涙腺が刺激されて仕方がなくなるのでこの辺にしておこうと思う。
最初のコメントを投稿しよう!