登校

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夕刻。 ひとりの少女が階段を駆け上がり、廊下を全力疾走していた。 そうして、辿り着いた教室の扉に手をかける。 間髪入れずに、勢い良くスライドさせた。 バン、と叩きつけるような大きな音が教室内に響いた。 「おはー!!」 音に負けない大きな声で、少女は挨拶した。 走ってきたせいか、普段からぼさぼさ気味の短い茶髪が、さらにぼさぼさと乱れている。 髪と同じ色の瞳が見据える先には、2人の少女たちが居た。 机を挟んでお喋りをしていたようだった。 「……おはようございます」 2人の内の1人が、本から視線を移し替えた。 腰まである黒髪を揺らしながら振り返る。 黒縁の眼鏡の奥で、髪よりも深い色の瞳が見つめ返した。 裾までだぼだぼとした黒い衣服。 いつも通り気怠そうな格好でいる"もみじさん"。 「おはよー、ななみん」 そして、もう1人も振り返った。 肩にかかる金髪がふわりと波打つ。 髪に似合う碧色の瞳が、嬉しそうに細められた。 「はぁー……。もぅ疲れたぁー」 "ななみん"と呼ばれた少女は、乱れた呼吸を整えつつ席に着いた。 たっぷりのフリルがあしらわれた青いワンピースに、しわが出来る。 それを気に留めず、ななみんは机に突っ伏した。 「おつかれさま。はい、水」 そんなななみんに、金髪の少女が水筒に入れてあった水を差し出した。 「あんがとーれいちゃん」 ななみんがお礼を言うと、少女―"れいちゃん"はにこりと微笑んだ。 それから、ななみんの前の席の椅子に腰を下ろした。 橙色を基調としたロングベスト。 淡い色合いのシャツ。 ホットパンツ。 ちょっとしたお洒落さんなれいちゃん。
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