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「わぁ!ママ綺麗!」
「マ…マ…?」
保育園を転勤したあと、幸奈ちゃんに良との結婚を告げ、出来るだけ一緒に過ごし、母親になる努力をしてきたけれど、幸奈ちゃんはいつも私を『先生』と呼び、『お姉ちゃん』と呼ぶことも、『ママ』と呼ぶことも一度もなかった。
幸奈ちゃんにとって、私は『先生』でしかない。気落ちしていた私に『焦らずゆっくり家族になればいい』と良は言ってくれた。
その幸奈ちゃんに、ママと呼ばれ、私の目に涙が溢れた。
思わず身を屈め、小さな幸奈ちゃんを、両手で抱き締めた。
「…幸奈」
「ママ、泣いたらダメだよ。パパが中で待ってるからね」
「…うん、そうだね」
抱き合っている私達を、パパは黙って見つめている。
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