神切り虫

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 遥か昔。  と在る廃村に、  マゲ切オニョコが居り、毎日々々、マゲの樹切っては、山神ヌッコト主にお祈りを捧げて居ったそうな。  ヌッコト主は、  塵を投棄し、  山に火を点け、  妄りに樹を切る輩には、取分、厳しい神罰を下す怖ろしい神。  けれど、  山野の畏怖と感謝を忘れぬオニョコには、褒美を穫らすと、別嬪なオニャコを遣わし、類希な御縁を授けると言うそうな。  何でも、  神切虫なる遣いの虫が、本乃の御神木でオニョコとオニャコを眺めて居るとか。  山野の菜と、  田畑の穀物で作られた、恩恵豊かなヌコ飯が大好物だと噂される。  だものでマゲ切も、儂にも別嬪オニャコが来んかいのぉ、ヌッコト主様、どうか儂にも御縁をくれんさい。  念仏の如く唱えては、来る日も来る日もマゲを切り、何処に在るかも露知らぬ、チョンマゲ探して練り歩く、  けれど知るのは、粉撒くてふてふ。 ぱくちなカメ虫。 更々降る粉が目印か? 特異な香が目印か?  問うが亀蝶は唯舞うばかり、  粉虫臭虫に見る虫に、黄虫茶虫に踊る虫、同じ虫なら舞わにゃ損々、舞って舞われて残すは孫々、酔って夢見て賑わえ村々。
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