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「危ないよ、タツオ」
「いいや、もうだいじょうぶ。狙撃手はいったよ。音が聞こえた」
サイコもブナの荒れた幹から顔をだし、射撃練習場のほうを不安げに見つめている。
「相手は慣れてるみたいだ。予鈴が鳴って、すぐにその場を離れた。でも、ぜんぜんあわてている様子がなかった。スムーズな離脱だ」
サイコが驚いた顔をする。
「見ていたの?」
「いや、でも音が聞こえた。手慣れた撤収の音だよ。ぜんぜんバタバタしていない。相手が誰か知らないけど、腕のいい狙撃手だ。いってみよう」
タツオは雑木林を抜けて、射撃訓練場にむかった。実習に使用される銃と銃弾は鍵のかかった銃器庫で厳重に管理されている。練習場の北東の角は、人型の標的が置かれた土盛りになっている。
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