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それが、私の大好きな時間。
だって、私しか知らない光景だから。
歴代の彼女たちも知らない、私だけの。
「いってきま~~すっ」
「いってらっしゃい。恭司、母さん後から行くから。未愛ちゃん、ちゃんと送ってあげなさいよ。」
「ハイハイ」
私たち2人は、雅美さんに見送られ学校までの道を歩き始めた。
私の通う中学は、家から徒歩で10分くらい。
恭ちゃんの高校は、そこから少し先の駅から電車で3駅先。
小学校と中学は、目と鼻の先で部活なんかも覗きに行けたのに。
高校は、ちょっとある。
それが、また寂しく感じる。
「恭ちゃん、高校でもバスケやるの?」
「そのつもり。」
「ふ~ん。じゃあ、またモテモテだね。」
バスケやるんだって嬉しい気持ちとまたモテモテで私の入る隙間がなくなりそうな気持ちでもやもやした。
「はぁ?そんなんでバスケやるんじゃねぇし。」
「わかってるけどさ…なんか面白くない。」
ちょっと口を尖らせ、うなだれる。
恭ちゃんがバスケ好きなのは、小さい頃から見てるから知ってる。
公園の広場で遅くまで練習してたのもずっと見てたから。
「未愛も部活入るんだろ?」
「うん。結衣と吹奏楽入ろうって決めてる。」
「なら大丈夫だって、そのうち楽しくなるだろ?そのうち彼氏なんか出来てさ。……ほら、学校着いたぞ。じゃあな。」
いつの間にか、中学の校門前に着いていた。
「恭ちゃんがいいもん。彼氏なんていらない。」
恭ちゃんは、振り返りもせず駅へ歩いていった。
私は、その背中を 桜の花びらが舞う中見つめていた。
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