第3話

2/16
前へ
/34ページ
次へ
四月一日、夕方。 岬{みさき}健介は夕飯の支度をしていた。 今日は両親ともに仕事で遅くなるらしいし、春休み中でやることもないので自分から買って出たのだ。 「お兄ちゃーん、今日は何作るのー?」  リビングの方から妹の知子{ともこ}の声がする。    知子は健介とは四つ違いで、今年で十三歳になるのだがまだ兄離れが始まっていないらしく、特にこの長期休暇中は健介にずっとべったりである。 「今日は肉じゃがとほうれん草の胡麻和え、それにご飯とみそ汁だぞー」  とキッチンから返事をしておく。 「やったあ」と嬉しそうな声が聞こえてきた。 肉じゃがは知子の好きな料理の一つである。 「あ、何か手伝おっか?」 「本当に? それじゃあピーラーでじゃがいもの皮を剥いておいてもらえると助かるな」 「了解しましたっ」  知子は気分がいいらしく、鼻唄まじりに軽快に皮を剥いていく。 あっという間にじゃがいも全部が裸になった。 「何か今日いいことあったのか?」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加