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――二〇〇六年八月五日
健介{けんすけ}は、家の近くを流れる大きな川に沿うかたちにできている土手に来ていた。
夏で、暑くて、彼は十歳だった。
もう夏休みに突入して二週間が過ぎており、彼はちょうど暇を持て余して午後の土手に遊びにやって来たのだった。
土手には大抵近所の友達が集まっていたし、仮に誰もいなかったとしても、一人でも十分に遊ぶことができた。
その日は一見して誰も知り合いの子どもはいないみたいだった。
川面は夏の陽光を反射して、見ていられないくらいにきらきらと光っていた。
川の真ん中あたりをマガモの親子が音もなく泳いでいる。
このあたりでは季節を問うことなくマガモを見ることができた。
さてどうしようか、と健介が考えていると、突然川の中から人の姿をした何かが現れた。
否、まさしく人であり、少女であり、そして健介のよく知る顔であった。
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