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僕が買われてから二日経った。
大体香水魚の香りは十日程で水に定着する。
向かいの香水魚はどうやら僕が買われる五日前に買われたらしく、残り三日で香りが定着する。
「ねえクールさん」
どうやら僕のあだ名らしい。
「何だい?」
「私たちの匂いが水に溶けきったら、買い主は私たちをどうするのでしょうね?」
そんなこと僕の知った事じゃない。それを知るのは神様か買い主だけだ。
でも、そんな返答を香水魚は求めていないのだろう。
何故なら、そんなこと当たり前だからだ。
当たり前のことに対しての質問は多分そういう普遍的な常識をつきつければ良いというものでは無い気がする。
「そうだね、僕らの買い主は優しそうな人だから飼ってくれるんじゃないかな」
そう言うと香水魚は一言アリガトウとだけ言って僕から視線を逸らした。
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