見つめ合い

2/5
前へ
/29ページ
次へ
僕が買われた日のことは覚えている。 丁度その日は人間社会にとって祝日というやつで、人が大勢来ていた。 僕らはおそらく細胞か何かに僕たちのヒストリーと現状が刻み込まれているらしく、僕の中では自分とはそういう物という認識が明確に出来ていた。 だから特別この入れ物越しの光景とガヤついた音に違和感も畏怖感も無かった。 そんな何の感慨も憤慨も無い僕がボウっと人間たちを見ていると、一人の女性が他の香水を持って僕の所へと訪れた。 どうやら僕の買い主はこの人らしい。そこからは流れ作業の如く、僕と他の香水をレジへと持って行き店を出た。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加