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 視聴覚室の扉を開けると、パシャ、とストロボが光り、ピピピピピピ、と電子音が響いた。  部屋の中央に設置された、こじんまりとした撮影ブース。  その左側に立てられた大きなレフ板の脇で椅子に腰かけ、笑顔を作っているのは、彩加だった。  卒業写真にしては笑いすぎじゃないかと心配になるくらい、大胆な笑顔だ。 「はい、いいですねえ。それじゃ、ちょっと真面目な顔も貰っておこうかな」  ちょっとチャラい感じのカメラマンのお兄さんが言うと、彩加は途端に神妙な顔をして見せた。 「おっ。すごくいいね。…うちの写真館の専属モデル、お願いしたいくらいだよ」  …めちゃめちゃ、調子いい事言われてる…。  それでも、やはり言われた彩加としては嬉しかったのだろう。普段は絶対にしない上目づかいを披露し、はにかんで見せている。  視聴覚室の後方の壁には、パイプ椅子がずらりと並んでいた。  撮影を待っているのは女子3名ほどで、その一番向こう側には、春山先生が座っている。 「…はいっ、OK!ありがとうね、彩加ちゃん」 「いーえっ」  彩加は上機嫌でカメラの前から立ち上がり、すたすたとこちらに向かって来た。 「萌、今の、どうだった?」 「うん、可愛かったよ、すごく」 「えー、そんなことないよぉ」  だしっと肩を叩かれ、私は椅子ごと倒れそうになった。 「はい、お次は…先生ですね。春山先生、どうぞ」 「はい」  春山先生が立ち上がると、助手の若い女性が先生の元に駆け寄った。  エチケットブラシで簡単にスーツのほこりを取ってから、先生の髪を指で梳き、整える。  よく見ると、ほんのり頬を染め、明らかに先生の顔に見とれているのが分かった。  促された先生が椅子に座ると、カメラマンはカメラの高さを調整し、ファインダーを覗いた。 「おおっと、いい男ですね、先生!…こりゃ、女生徒にモテモテなんじゃないですかっ」 「いや、それはないです」  先生が笑うと、すかさずシャッターが切られた。  ――なるほど…スゴイ。さすがプロ。  わたしはチャラいカメラマンの後ろ姿を尊敬の眼差しで見つめた。
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