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「はいっ、もう一枚行きますよっ」
パシャ。ピピピピピ…。
「あれ、また表情が硬くなっちゃったな。
先生、照れずににっこり。ハイッ」
先生は、居心地の悪そうな様子でカメラを見つめている。
笑うべきか、真面目な顔をすべきか、迷っている様子だ。
……先生…。可愛い…っ。
胸がきゅうんと鳴って、わたしはこっそり携帯を取り出した。
このどさくさに紛れて、先生のハニカミ笑顔をゲットするんだっ。
カメラを起動し、先生に向ける。
――ここからだと、ちょっと小さいな…。
椅子から腰を浮かし、1歩前進してみたが、まだまだ小さすぎる。
3歩進んで、やっと先生の顔を識別できる程度になった。
どうせなら、もうちょっとアップで……。
先生にレンズを向けたまま、画面を見ながらじりじりと近づいて行く。
――よし、ベスポジッ。
シャッターを切ろうとして、ふと見ると、部屋に居た彩加以外の女子生徒が全員、携帯を構えてカメラマンの後ろに立っていた。
パシャ、というシャッター音に振り返ると、彩加は先生に群がっているわたしたちの間抜けな後姿を、引きでカメラに収めたところだった。
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